死ぬというのは
買い置きした食料品が本人よりも「長生き」すること
そう思い知ったから
もう生きているかどうかわからない日々のための準備は
やめようと思ったのにいつの間にか人間は
「明日のため」の買い物をしてしまうものだね
彼は
汚れたり傷ついたり弱ったり発熱したり
痒かったりお腹がすいたりのどが渇いたり落ち込んだり
重かったり老いたり朽ちたりする面倒な
「身体」
から自由になって
「まるでなにもないような」
きわめて軽量のオンデマンド式ヴァーチャル・ボット
になって
好きな時に望んだ人の脳裏に出没できる
進化した形態の存在となった
のかもしれない
ほら
あなたの隣には
なにもないようでいて
天使の羽毛ひとつ分の重さの
あるいは悪魔の爪ひとかけ分の重さの
オンデマンド・クリップ・ボットが浮かんでいる
1クリップの長さは
vineとおなじく6秒です
もちろんエンドレス再生も可能
スイッチは瞬きひとつ
in my bed/Amy Winehouse
Tuesday, September 15, 2015
Wednesday, July 29, 2015
dream your life away
例えば明け方まだ夢の中にいるとき、なにかしなければいけないことがあって、起きた時も瞬間まだそのなにかを遂行しようとしている。そして、やや遅れて、それは「夢」という「別の世界」のことだった、と気づく。「現実」界ではなく「夢」界のことだから、放念してもいいのだ、と思う。
死ぬということも、そういうことかも、しれない。
夢の中とはいえ、懸命だった。計画し、実行し、気を配り、積み上げてきた。感じた。出会った。あの通じた気持ち。持ち物。決して忘れないと胸に刻んだ記憶。
それが、目覚めることによってすべて唐突に意味を失い、「なかったこと」に後退して一瞬に流れ去る。
「死んだ」瞬間、とおなじように。
それまでの進行のすべてが、行き場をなくし、手放してもいいものに変わってしまう。
虚しいことでもあるけれど、心配も、失敗も、背中まで迫っていた追手も、同様にすべてちゃらになる。足元がなくなるような、やぶれかぶれの安堵感。
そしてまた、夜がくると、わたしたちは懲りもせず別の人生に船出して、朝、あっさりとその世界を捨てる。
生から死に切り換わるのに一番似ているのは夢から目覚めること。
毎朝、わたしたちは死んでいるようなものだ。
Sha Zi Cai Bei Shang/Pu Shu
死ぬということも、そういうことかも、しれない。
夢の中とはいえ、懸命だった。計画し、実行し、気を配り、積み上げてきた。感じた。出会った。あの通じた気持ち。持ち物。決して忘れないと胸に刻んだ記憶。
それが、目覚めることによってすべて唐突に意味を失い、「なかったこと」に後退して一瞬に流れ去る。
「死んだ」瞬間、とおなじように。
それまでの進行のすべてが、行き場をなくし、手放してもいいものに変わってしまう。
虚しいことでもあるけれど、心配も、失敗も、背中まで迫っていた追手も、同様にすべてちゃらになる。足元がなくなるような、やぶれかぶれの安堵感。
そしてまた、夜がくると、わたしたちは懲りもせず別の人生に船出して、朝、あっさりとその世界を捨てる。
生から死に切り換わるのに一番似ているのは夢から目覚めること。
毎朝、わたしたちは死んでいるようなものだ。
Sha Zi Cai Bei Shang/Pu Shu
Tuesday, July 7, 2015
fête des étoiles
夢の中のあの人は寂しそうにしている
わたしはその寂しさのわけを知らない
寂しいはずではない場面の気がする
寂しい理由がわからない
だからちょっとこわくて
わたしはいつもはしゃいでいる
あの人はそれを止めないし
言い争うことはしないで
わたしの陽気につきあってくれるけれど
寂しい理由は言わず
寂しそうなままだ
なんだー
本当に死んじゃったかと思ったよー
あのさー 死亡届とかさ
取り消したりできるのかしら
取り消してもらわなきゃ ねえ?
近所の人たちびっくりするよね
まあいいよねそんなこと
また一緒に暮らせるのに
こうして横にいるのに
これから手続きとかいっぱいして
また仕事とかしなきゃいけないのに
なぜそんなに
不釣り合いな寂しい顔をしているのだろう
しばらく死んでたから,まだ力が出ないのかな
やることがたくさんある
また一緒に暮らせるのに
こうして横にいるのに
これから手続きとかいっぱいして
また仕事とかしなきゃいけないのに
なぜそんなに
不釣り合いな寂しい顔をしているのだろう
しばらく死んでたから,まだ力が出ないのかな
やることがたくさんある
さあ頑張らなくては
と思うのに
わたしはまた目を覚ます
と思うのに
あの人は寂しそうなまま
わたしは陽気なまま
いつしか夢は終わって
わたしは陽気なまま
いつしか夢は終わって
一つ命の数の合わない世界に
make this go on forever/snow patrol
Monday, July 6, 2015
what i have lost
先に立って不機嫌に歩いていく背中を
思い出し笑いを
挙げられた右手を
ただいまの声を
靴下を脱ぐさまを
髪から滴る水を
忙しなくゴシゴシとタオルで髪を拭くしぐさを
ほかほかと茹で上がった肌を
そこにぽつんとある濃いピンクのにきびを
肩にかけられたタオルを
石鹸の匂いを
猫背のままテレビを見つめる背中の曲線を
思い出す白く明るい昼下がり
神様に嫉妬されて
取り上げられる価値もなさそうな
そんな小さな平凡な
些細な場面ばかり思い出す
返して欲しいのは金の斧ではありません
銀の斧でもありません
お持ちになっていてもつまらないものですので
返していただけないでしょうか
Craigie Hill/Cara Dillon
思い出し笑いを
挙げられた右手を
ただいまの声を
靴下を脱ぐさまを
髪から滴る水を
忙しなくゴシゴシとタオルで髪を拭くしぐさを
ほかほかと茹で上がった肌を
そこにぽつんとある濃いピンクのにきびを
肩にかけられたタオルを
石鹸の匂いを
猫背のままテレビを見つめる背中の曲線を
思い出す白く明るい昼下がり
神様に嫉妬されて
取り上げられる価値もなさそうな
そんな小さな平凡な
些細な場面ばかり思い出す
返して欲しいのは金の斧ではありません
銀の斧でもありません
お持ちになっていてもつまらないものですので
返していただけないでしょうか
Craigie Hill/Cara Dillon
Saturday, May 16, 2015
hide and seek
幼児がかくれんぼをすると
自分の目を手で覆ったり
どこかに頭だけ突っ込んだりすることで
「隠れたつもり」になることがある。
人はその姿を見て幼さを笑うけれど
「自分に見えているものが相手にも見えている世界」であり
「自分が自分に見えなくなれば相手からも消えてしまえる」
というのは
なかなかスウィートな誤解だ。
わたしもいなくなれるかしらん。
ある日ふと
強い近視の矯正をやめてみた。
コンタクトレンズを通さない世界は
物という物の境界線はぼやけ
字という字はただの紙魚になり
光という光は
軽い乱視が作り出す派手なビームの触手を縦横に伸ばし
夜景は絢爛豪華になった。
そして
なんというかぜんたい的に
たいへん優しくなった。
とりわけ鏡で見る自分は
とても見やすくなった。
肌は少し滑らかになり、
二の腕は少しほっそりした。
自分をつぶさに見なければならない拷問から、
こんな簡単なことで解放されるとは思わなかった。
そうだ。
目を閉じればよい。
見なければ、生きていけるのだ。
幼い子のかくれんぼのようにわたしは
目を閉じることで出現した
自分のいない快適で安全な優しい世界
に生きている。
もうわたしはどこにもいない
見つからないよ
もうだれも
見つけにこなくていいよ。
Born to die/ Lana Del Rey
自分の目を手で覆ったり
どこかに頭だけ突っ込んだりすることで
「隠れたつもり」になることがある。
人はその姿を見て幼さを笑うけれど
「自分に見えているものが相手にも見えている世界」であり
「自分が自分に見えなくなれば相手からも消えてしまえる」
というのは
なかなかスウィートな誤解だ。
わたしもいなくなれるかしらん。
ある日ふと
強い近視の矯正をやめてみた。
コンタクトレンズを通さない世界は
物という物の境界線はぼやけ
字という字はただの紙魚になり
光という光は
軽い乱視が作り出す派手なビームの触手を縦横に伸ばし
夜景は絢爛豪華になった。
そして
なんというかぜんたい的に
たいへん優しくなった。
とりわけ鏡で見る自分は
とても見やすくなった。
肌は少し滑らかになり、
二の腕は少しほっそりした。
自分をつぶさに見なければならない拷問から、
こんな簡単なことで解放されるとは思わなかった。
そうだ。
目を閉じればよい。
見なければ、生きていけるのだ。
幼い子のかくれんぼのようにわたしは
目を閉じることで出現した
自分のいない快適で安全な優しい世界
に生きている。
もうわたしはどこにもいない
見つからないよ
もうだれも
見つけにこなくていいよ。
Born to die/ Lana Del Rey
Friday, April 17, 2015
midafternoon low fever
3年間ずっと
「殺せ、殺せ、殺せ、殺せ」
と聞こえていたインクジェットプリンタの印刷音が、
とつぜん
ただのつまらない機械音に戻るくらいには
「回復」
したかなと思う春の昼下がり。
Charlie Brown/Coldplay
「殺せ、殺せ、殺せ、殺せ」
と聞こえていたインクジェットプリンタの印刷音が、
とつぜん
ただのつまらない機械音に戻るくらいには
「回復」
したかなと思う春の昼下がり。
Charlie Brown/Coldplay
Tuesday, March 24, 2015
piercing
女の身体に穴をひとつ(正しくは二つなのだが)開けるというのはよくある暗喩だ。
わたしは実際「儀式」を思い出した。
わたしはときおり目を閉じて穴の声に耳を澄ます。
耳朶の柔らかく傷つきやすい組織は、かつてのかたい結合を取り戻そうと互いに必死なのだが、鋭く冷たく容赦ない金属の針がなんどもなんども貫通し続けるので分かたれたままだ。
両耳に開いた新たな一組の穴は音を聞くことはできない。一日か二日にいちど、つかのま風を感じるだけである。
小さな空洞はそこを貫通する金属のためだけに存在する。
穴は待ち、貫かれるのを感じる。忠実な空洞。忠実な痛み。微笑みて耐えよ、淑女らよ!
Lady
Tuesday, March 10, 2015
doing nothing is what i do
『アバウト・ア・ボーイ』という小説がありそれをもとにした映画がありどちらも好きだ。
大人になりきれない若くもなくなった年の男が少年と出会ってほんの少しだけ成長する話と言えなくもないけれど決して成長しすぎなくて少年の成長に明らかに負けてるとこなんかもすきだ。
でもいちばんすきなのは筋とはあまり関係ない部分で、その男が一発屋の作曲家の息子で、たった一曲の爆発的なヒットで築いたひと財産と、いまだに彼に入ってくる印税で、「なにもしないで」生活しているところだ。
なんの仕事もしない。しようともしない。それを反省したり引け目を感じたりもしない。ただ、なにもしない。
すてきだ!
こんな素敵な無職は見たことがない。という部分がいちばん好きでいいないいなと思いながら読むから本を読んでもあまり筋が頭に入らず、映画を見ても無職男の部屋の洒落たインテリアがいいないいなと思いながら反芻しているうちに終わってしまうからストーリーを正しく追えていたかあやしい。
どう考えても最近見たなにと比較してもあんなにすてきな生き方はないから、
なんにもしないことにした。
わたしも、なんにもしないことにした。
めざせ無職。
そのうち、なんにもしないための準備を始めて、なんにもしないを実践してなんにもしないわたしを実現しよう!
わくわくするね。
killing me softly/roberta flack
大人になりきれない若くもなくなった年の男が少年と出会ってほんの少しだけ成長する話と言えなくもないけれど決して成長しすぎなくて少年の成長に明らかに負けてるとこなんかもすきだ。
でもいちばんすきなのは筋とはあまり関係ない部分で、その男が一発屋の作曲家の息子で、たった一曲の爆発的なヒットで築いたひと財産と、いまだに彼に入ってくる印税で、「なにもしないで」生活しているところだ。
なんの仕事もしない。しようともしない。それを反省したり引け目を感じたりもしない。ただ、なにもしない。
すてきだ!
こんな素敵な無職は見たことがない。という部分がいちばん好きでいいないいなと思いながら読むから本を読んでもあまり筋が頭に入らず、映画を見ても無職男の部屋の洒落たインテリアがいいないいなと思いながら反芻しているうちに終わってしまうからストーリーを正しく追えていたかあやしい。
どう考えても最近見たなにと比較してもあんなにすてきな生き方はないから、
なんにもしないことにした。
わたしも、なんにもしないことにした。
めざせ無職。
そのうち、なんにもしないための準備を始めて、なんにもしないを実践してなんにもしないわたしを実現しよう!
わくわくするね。
Thursday, February 12, 2015
too many a time
ここから先頼れるものがあるとしたら、それはもう医学ではなくて黒魔術の類だなと
私も思ったことがあるから
やたら従うのが難しい厳格な食餌療法で病を治そうとする代替療法もどき信者を笑えない
この世にはまだ誰も発見してない薬草や、試したことのない偶然の組み合わせがあって、
それは嘘のように病を消滅させるのではないかとか
あるものごとがたまさかぴったり同じタイミングで起こったらすべての死者が甦るのではないかとか
例えば天気雨の日にどこかの火山が爆発し、その噴煙が止まなかった3日目の夜が満月だったら、とか
大潮の中を漕ぎ出した船に生贄の羊を7匹載せ、太平洋上のある地点で完全なる凪の海面にその7匹の血を滴らせたら、とか
あのひと宛にきた手紙の宛名欄を1000枚切り溜めて神の山の崖に咲く花から採った秘伝の香油を垂らして燃やしたら、とか
誰もやったことのない、実現したことのない
奇跡を起こす「何かの組み合わせ」を
いくつもいつくもいつくも、
くるひもくるひもくるひも、考えた
なんの経典もなく手引きもなく闇雲に。
そしてそんなことを考えている自分の愚かしさによってではなく
ただそのなんどもなんども繰り返す夥しさによって
私はどん底まで疲弊した
Oh,
you pretty things/David Bowie
Monday, January 19, 2015
forlorn tree
「かんがえ」の芽があれこれと顔を出すけど
それ以上育ちはしないで ひょろひょろと痩せ枯れていく
それ以上育ちはしないで ひょろひょろと痩せ枯れていく
芽のままの死骸
かんがえの死骸たち
でもあなたたちが成長した姿をそれほど気にいるかどうかわからない
かんがえは幼い芽が
いっせいに伸びたつのを
見ているときがいちばん誇らしくどきどきして
あとはそれほどの興味もそそらないものなのかもしれない
それでも奇怪な茎を伸ばし不用意に枝を広げて落ち着きのない葉を繁らせ
不恰好な花を咲かせみすぼらしい実がついて爛熟し落下するのを
見ているべきなのかもしれないことはわかるくらいに年老いた
早く死にたいがおわって
もう少し生きていたいがはじまったら
わたしの死期は少し近づくのかもしれない
さようなら珊瑚の海
さようなら絶滅危惧種たち
さようなら謙虚でうつくしい日本語
さようなら自由とか平等とか希望とかその他の幻想
さようならやればできる
さようなら夢は叶う
あなたたちひとりを死なせはしない
わたしもいっしょに死ぬからね
Lullaby/Aida Nikolaychuk
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